Googleストリートビューの「タイムマシン機能」が暴く日本の裏歴史――地図から“消された家”と、デジタル空間に残留する“死者”の記録を追う。

第1章:クロノス・マッピング――4次元化するデジタル地図の起源と衝撃

Googleストリートビューに実装されている「過去の画像」機能、通称「タイムマシン機能」。多くのユーザーにとって、それは単なる「過去の風景を確認する便利ツール」として認識されているかもしれない。しかし、その背後には、現代社会が抱える「記憶」と「忘却」、そして「喪失」にまつわる深淵なテーマが横たわっている。この機能は、単に古いデータをアーカイブしているだけではない。都市開発によって物理的に抹消された集落、災害によって瞬時に失われた街並み、そして、今は亡き家族の生前の姿――それらすべてを、残酷なほどの解像度で「永遠の現在」として保存し続けているのである。

本稿では、この機能が日本で誕生した経緯から、それがもたらす予期せぬ社会的現象、法的論争、そして現代人の死生観への影響に至るまで、膨大な資料と事例に基づき徹底的に検証する。

1.1 東日本大震災と「未来へのキオク」プロジェクト

Googleストリートビューの歴史を語る上で、2011年3月11日は決定的な転換点として刻まれている。現在の「タイムマシン機能」の概念的・技術的な起源は、シリコンバレーではなく、日本の被災地にあったからである 。   

当時、Googleの地図サービスは「最新の現実」を反映することを使命としていた。道路が変われば地図も書き換わるのが常識であった。しかし、東日本大震災後、被災者や自治体からGoogle日本法人に対し、「震災以前の街の姿を残してほしい」「流されてしまった故郷をもう一度見たい」という切実な要望が殺到した 。これを受け、Googleは「最新の情報だけが価値ある情報ではない」というパラダイムシフトを迫られることになる。   

2011年、Googleは被災地の復興支援サイト「未来へのキオク」を立ち上げた。ここでは、震災前に撮影されたストリートビュー画像と、震災後の画像を並べて表示し、街並みの激変と復興の過程を可視化する試みが行われた 。このプロジェクトは、単なる懐古趣味ではなく、津波の爪痕を後世に伝える「デジタル・アーカイブ」としての側面を強く持っていた。   

1.2 「死蔵データ」の再発見とシステム刷新

「未来へのキオク」で培われた「過去と現在を比較する」というアイデアは、Google本社によって全世界的な機能へと拡張されることとなる。それが2014年に正式実装された「タイムマシン機能」である 。   

この機能の実装は、技術的に容易なものではなかった。Googleのプロダクトマネージャーであった河合敬一氏の証言によれば、それまで「過去の画像」は古いデータとしてサーバーの奥底に死蔵されていた。これをユーザーが自由に引き出し、現在地と座標を完全に同期させて閲覧可能にするためには、ストリートビューのインフラストラクチャを根本から作り替える必要があったという 。開発には約2年の歳月が費やされた。   

結果として、我々はPCやスマートフォンの画面上で、スライダーを操作するだけで時間を遡行できるようになった。最も古いデータでは2007年〜2008年まで遡ることができ、都市の変遷や季節の移ろいを追体験することが可能となった 。日本で生まれた「喪失への抵抗」としてのアイデアが、世界中の地図を4次元(空間+時間)へと拡張したのである。   


第2章:デジタル空間に残留する“死者”たち――再会と追悼の場として

タイムマシン機能がもたらした最も情緒的かつ衝撃的な現象は、ストリートビューが意図せずして「死者との再会の場」となったことである。物理的な肉体は滅びても、デジタルデータとしての「その人」は、撮影された日時の座標に永遠に立ち続けている。

2.1 2021年正月、Twitterを席巻した「亡き父」の背中

2021年1月、コロナ禍による外出自粛が続くなか、あるTwitter(現X)ユーザーの投稿が日本中を揺るがした。「タムチンキ」氏によるその投稿は、Google Earth(ストリートビュー)で実家を見た際に、7年前に亡くなった父親の姿を発見したというものであった 。   

発見された情景の分析詳細
被写体実家の前の路上に立つ父親。
動作一服しながら、誰かを待っている様子。
視線の先道の奥から歩いて帰ってくる母親の姿が写っていた。
背景(コンテクスト)当時、姉が病死した後で、両親は孫の面倒を見ていた。母親は孫を幼稚園へ送り、帰宅する途中であったと推測される。
時間の符合父親が急逝(急性心不全)したのは、まさに母親が孫を送りに行っている、わずか10分ほどの不在の間であった。

タムチンキ氏は、写真に写る父の姿が、まさに死が訪れる直前の、何気ない日常の瞬間であった可能性が高いことに気づく。「無口だけど優しい親父だった」と語る氏の言葉と、画面越しに見つめ合う父と母の構図は、多くの人々の涙を誘った。氏は「この場所の写真が更新されないでほしい」と願った 。   

このエピソードは、ストリートビューという無機質なデータ集合体が、文脈(コンテクスト)を与えられた瞬間に、極めて個人的で代替不可能な「形見」へと変貌することを示している。

2.2 連鎖する「デジタル・ノスタルジア」と供養の変容

タムチンキ氏の投稿は、11.5万リツイート、68.8万いいね(当時)という驚異的な反響を呼び、それをきっかけに多くのユーザーが「自分も故人を探してみよう」と地図上の探索を開始した。その結果、次々と「デジタルの再会」が報告されることとなった 。   

  • 祖母の優しさ:あるユーザー(chy氏)は、亡くなった祖母が、同じく亡くなった愛犬の小屋に日傘を差している姿を発見した。猛暑の中、愛犬を気遣いながら家族の帰りを待つ祖母の姿は、生前の彼女の人柄そのものを表していた。「ここに来ると会えることが幸せ」という言葉は、ストリートビューが「デジタル仏壇」や「墓標」に近い機能を果たし始めていることを示唆する 。   
  • 夫婦の日常:別のユーザー(TacHi氏)は、4年前に亡くなった祖父が、祖母と連れ立って畑仕事から帰ってくる様子を発見した。生前には撮影する機会のなかった「何気ない日常のツーショット」が、Googleのカメラによって記録されていたのである 。   
  • ペットとの再会:人間だけでなく、亡くなった愛犬や愛猫が家の前で昼寝をしている姿を見つけ、涙するユーザーも後を絶たない。

これらの現象は、現代人の「供養」や「追悼」の形が変容しつつあることを示している。お盆に墓参りをするように、命日やふとした瞬間にストリートビューの過去画像を開き、今はなき家族の姿を確認する。そこには、静止画の写真アルバムとは異なる、空間的な広がりと「そこに居る」という臨場感が存在する。デジタル空間は、彼岸(死者の世界)と此岸(生者の世界)が交錯する新たな霊的空間となりつつあるのだ。

2.3 心霊現象と誤認される「デジタルの幽霊(グリッチ)」

一方で、ストリートビュー上の「死者」は、時に恐怖の対象としても語られる。撮影時の技術的な制約により生じる映像の乱れが、本物の「幽霊」と見紛うような異様な光景を生み出すことがあるからだ 。   

デジタル・ゴーストの発生メカニズム

Googleの撮影車両やトレッカーは移動しながら全方位を撮影し、複数の画像を合成(スティッチング)してパノラマ画像を生成する。この過程で、動いている人物や物体が撮影されると、以下のような現象が発生する。

  1. 切断と透過:人物が移動している間に複数のカメラで撮影されると、合成時に手足が消えたり、胴体が半透明になったりする。シンガポール美術館などで話題になった「半透明の人間」は、この典型例である 。   
  2. 増殖:同じ人物が少し離れた場所で再度撮影され、一つのパノラマ内に同一人物が複数人存在するかのように見える現象(ドッペルゲンガー現象)。
  3. 異形化:顔認識アルゴリズムの誤作動や画像の歪みにより、顔が溶けたように見えたり、手足が異常に長く引き伸ばされたりする。

現代の怪談スポット

これらの「グリッチ(バグ)」が、廃墟や心霊スポットとされる場所で発生すると、それは即座に怪談として消費される。

  • 淡嶋神社(和歌山県):人形供養で知られるこの神社では、無数の人形が並ぶ不気味な光景に加え、光の反射や画像のノイズが「霊の光」や「動く人形」としてネット上で噂された 。   
  • 廃トンネルと「白い靄」:日本各地のトンネルや廃墟では、湿気や埃がカメラのフラッシュや外光を乱反射させ、白い靄(オーブ)として写り込むことが多い。これが「霊体」として拡散されるケースが多発している 。   

社会学的に見れば、これは「パレイドリア効果(意味のない刺激から馴染みのあるパターンを見出す心理現象)」の現代版と言える。かつて人々が柳の木の下に幽霊を見たように、現代人はディスプレイ上のノイズや合成エラーの中に死者の姿を見出しているのである。


第3章:地図から消された場所――「デジタル遺構」としての記録

タイムマシン機能は、個人の記憶だけでなく、国家プロジェクトや災害によって物理的に消滅した「場所」そのものの記憶装置としても機能している。ここでは、現実空間からは抹消され、サーバーの中にのみ存在する「デジタル遺構」の実態に迫る。

3.1 震災遺構デジタルアーカイブ:保存と解体の狭間で

第1章で触れた通り、東日本大震災の被災地では、倒壊の危険がある建物や、辛い記憶を呼び起こす建物を解体するか保存するかで激しい議論が交わされた。Googleの「震災遺構デジタルアーカイブプロジェクト」は、物理的な保存が困難な建物であっても、データとして後世に残すための第三の道を提供した 。   

Googleは自治体の許可を得て、通常は立ち入り禁止の建物内部まで撮影を行っている。

主要なデジタル震災遺構の記録

施設名所在地記録されている内容と特徴出典
陸前高田市役所 旧庁舎岩手県1階部分に津波が運んだ大量の土砂と瓦礫が堆積。流された軽自動車が屋内に残存。3階天井付近まで達した浸水痕が生々しく残る。
浪江町立請戸小学校福島県原発事故による避難区域内。体育館の床は地震と津波で陥没。ステージ上には、震災当日に実施されるはずだった卒業式の看板が掲げられたまま放置されている。屋上からは福島第一原発の排気筒が視認できる。
旧大船渡商工会議所岩手県津波の衝撃で壁の一部が完全に消失し、建物内部が断面図のように露出。解体作業が進む周囲の風景と共に記録されている。
陸前高田市定住促進住宅岩手県5階建ての建物の4階部分までが津波被害を受けた様子を、見上げるアングルで体感できる。

これらの映像は、津波の破壊力を客観的に示す一次資料として、防災研究や教育現場でも活用されている 。物理的な遺構はいずれ風化し、解体される運命にあるかもしれないが、デジタルアーカイブはクラウド上でその姿を留め続ける。   

3.2 ダムの底に沈んだ村:八ッ場ダム水没地区

群馬県の八ッ場ダム建設に伴い、2019年から2020年にかけて広大な地域が水没した。かつて温泉街へのアクセス路として賑わった道路や、人々の生活があった集落は、今や深い湖底にある。しかし、ストリートビューのタイムマシン機能を使えば、水没前の風景を「散策」することが可能である 。   

  • 失われた「高さ」:かつて吾妻渓谷にかかっていた橋の上からの眺めは、現在とは全く異なる。ダム湖が満水になった現在、水面は橋の直下まで迫っているが、過去画像では遥か下方に川が流れ、渓谷の深さと自然の雄大さを感じることができる 。   
  • 消えた生活の痕跡:水没地区の旧道を進むと、立ち退き前の家屋や看板、バス停などが確認できる。ブログなどで現地を訪れた人々は、スマホで過去の画像を表示し、目の前の湖面と対比させることで、「ここに確かに村があった」という事実を噛み締めている 。これは「デジタル廃村探索」とも呼ぶべき新しいツーリズムの形である。   

3.3 国家プロジェクトに消された団地:霞ヶ丘アパート

2020年東京オリンピック・パラリンピックのメインスタジアムとなる新国立競技場の建設予定地にあった「都営霞ヶ丘アパート」。昭和の風情を色濃く残すこの団地も、立ち退きと解体を経て姿を消した 。   

ストリートビューのタイムスライダーを操作すると、2009年頃の画像では、布団が干されたベランダ、井戸端会議をする住民、団地内の公園で遊ぶ子供たちの痕跡が見て取れる。しかし、年代を進めるにつれて、窓にはベニヤ板が打ち付けられ、周囲には工事用のフェンスが張り巡らされ、やがて巨大な重機が建物を喰らい尽くし、更地となり、最後には巨大なスタジアムが聳え立つ。 一部の地点では、過去画像が閲覧できなくなったり、不自然なボカシが入ったりする現象も報告されている 。これはシステムの不具合のほか、プライバシー保護の観点からの削除要請が、過去データにまで波及した結果である可能性も指摘されている。   

3.4 封鎖された廃墟の迷宮:軍艦島(端島)

長崎県の軍艦島(端島)は、世界文化遺産に登録されているが、建物の老朽化が著しく、一般観光客の立ち入りエリアはごく一部に限られている。しかし、Googleは長崎市の協力のもと、バックパック型機材「トレッカー」を用いて、立入禁止区域を含む島全体の撮影を敢行した 。   

  • 生活の真空パック:撮影員が足を踏み入れた廃墟となった集合住宅の内部には、当時の生活用品が驚くほどそのまま残されている。ブラウン管の白黒テレビ、飲みかけのようなソーダの瓶、散乱する雑誌や靴。これらは、物理的に現地を訪れても絶対に見ることのできない光景である 。   
  • 崩壊の進行:ストリートビューは、風雨や台風によって崩壊が進む島の様子も記録している。コンクリートが剥落し、鉄骨が露出し、植物が人工物を侵食していく過程は、都市の終末をシミュレーションするかのような迫力を持っている。

第4章:プライバシーと「忘れられる権利」――デジタルタトゥーとしての地図

ストリートビューが過去を克明に記録し続けることは、裏を返せば、個人にとって「消し去りたい過去」もまた、半永久的に公開され続けることを意味する。ここでは、プライバシー権、肖像権、そして「忘れられる権利」を巡る法的・倫理的な問題を深掘りする。

4.1 「ぼかし」のメカニズムと限界

Googleは、プライバシー保護のために、顔や車のナンバープレートに対して自動的にぼかし処理を行っている。また、ユーザーからの申請に基づき、自宅全体や特定の物体に対して手動でぼかしを入れる機能も提供している 。   

  • 申請プロセス:ユーザーは「問題の報告」機能を使用し、ぼかしを入れたい対象(自宅、顔、表札など)と理由を申告する。Googleがこれを承認すると、画像は恒久的にぼかされる 。   
  • 不可逆性の罠:重要なのは、一度ぼかし処理が適用されると、二度と元に戻すことができない点である。例えば、自宅を売却した後、新しい所有者が「ぼかしを解除してほしい」と望んでも、Googleは元の画像データを破棄(または加工済みデータで上書き)しているため、復元は不可能である 。   
  • 過去画像への適用不全:さらに深刻な問題は、最新の画像に対してぼかしリクエストを行っても、過去の「タイムマシン画像」には反映されない、あるいは反映にタイムラグが生じるケースがあることだ。これにより、「現在はぼかされているが、2015年の画像を見ると表札が丸見え」といった事態が発生し、過去の居住者のプライバシーが脅かされることがある 。   

4.2 「忘れられる権利」を巡る司法の闘争

インターネット上の過去の記録を削除する権利、いわゆる「忘れられる権利」については、欧州を中心に法整備が進んでいるが、日本においては司法の判断は慎重である。

最高裁決定(2017年):削除のハードル

自身の逮捕歴がGoogle検索で表示され続けることはプライバシー侵害であるとして、ある男性が削除を求めた裁判において、最高裁判所は2017年1月31日、削除を認めない決定を下した 。 最高裁は、検索結果の削除が認められる要件として、以下の「比較衡量」の枠組みを示した。   

「その事実を公表されない法的利益」 > 「その事実を公表する理由(情報の公共性・社会的意義)」

この判決は、検索結果に関するものであるが、ストリートビューを含むデジタルアーカイブ全般に大きな影響を与えている。つまり、単に「昔のことが知られたくない」「恥ずかしい」という理由だけでは、公共の場(インターネット)から情報を削除させることは法的に極めて困難であるという判例が確立されたのである 。   

福岡高裁(2012年):ベランダの洗濯物事件

ストリートビューそのものを巡る裁判としては、2012年の福岡高裁判決が有名である。アパートのベランダに干していた洗濯物がストリートビューに写り込み、精神的苦痛を受けたとして女性がGoogleを提訴した事件である。 裁判所は、「公道から撮影している以上、プライバシー侵害の受忍限度を超えるとは言えない」として、原告の請求を棄却した 。この判決は、Googleによる無差別かつ包括的な撮影行為に対し、日本の司法が一定の正当性を認めたことを意味する。   

4.3 デジタルタトゥーとしての「写り込み」

法的な壁が厚い一方で、現実の被害や不安は広がっている。

  • 意図せぬ瞬間の拡散:ストリートビューには、立ち小便をする姿、路上でキスをするカップル、転倒する子供など、本人にとって不名誉な瞬間が記録されることがある。これらが「オモシロ画像」としてSNSやまとめサイトに転載されると、元のストリートビュー画像が更新・削除された後も、魚拓としてネット上を漂流し続ける(デジタルタトゥー) 。   
  • 犯罪への悪用と過去の追跡:空き巣の下見に利用される懸念に加え、タイムマシン機能を使えば、「かつてその家に誰が住んでいたか」「どのような高級車が停まっていたか」を遡って調査することが可能になる。これは、ストーカー被害者や、過去を隠して生活している人々にとって深刻な脅威となり得る 。   

第5章:結論――我々は「忘却なき時代」をどう生きるか

【表1】主要な「デジタル遺構」および話題スポット詳細

場所名称カテゴリストリートビュー上の特徴・見どころ文脈・背景
浪江町立請戸小学校震災遺構体育館内部の惨状、放置された看板、屋上からの原発遠望 福島第一原発事故避難区域。時が止まった学校。
陸前高田市役所 旧庁舎震災遺構内部に流入した土砂、天井付近の浸水ライン、破壊された什器 津波の威力の科学的記録。
八ッ場ダム水没地区水没遺構2019年以前の画像で、現在湖底にある集落、旧道、橋梁を閲覧可能 ダム建設による集落の完全水没。
端島(軍艦島)産業遺産立入禁止区域の住宅内部、残留物(TV、瓶)、崩落する壁面 世界遺産。風化が進む廃墟の現状記録。
都営霞ヶ丘アパート再開発解体前の団地の生活感、バリケード封鎖、更地化、新国立建設 東京五輪による強制的な都市の代謝。
淡嶋神社オカルト境内に並ぶ大量の人形、光の加減による心霊現象的ノイズ 人形供養の神社。ネット怪談の舞台。

【表2】過去画像閲覧(タイムマシン機能)の利用ガイドとトラブルシューティング

項目詳細内容参照元
PCでの操作ストリートビュー画面左上の「時計アイコン」をクリックし、スライダーで年月を選択。
スマホでの操作画面をタップし、下部に表示される「他の日付を見る」を選択。サムネイルから過去画像を選ぶ。
閲覧できない場合ブラウザのキャッシュクリア、Googleマップアプリの更新、拡張機能の無効化を試す。「時計アイコン」がない場所は過去データが存在しない。
ぼかしの申請画面右下の「問題の報告」から申請。一度適用されると元に戻せない点に注意。

5.1 4次元アーカイブの光と影

本稿で見てきたように、Googleストリートビューのタイムマシン機能は、以下の3つの相貌を持つ、現代社会における巨大な記憶装置である。

  1. 歴史の証人(パブリック・アーカイブ):震災遺構や軍艦島のように、失われゆく文化財や災害の教訓を保存する公共財としての価値。これは人類にとっての共通資産であり、防災や教育の観点から極めて重要である。
  2. 個人の聖域(プライベート・アーカイブ):亡き家族との再会や、失われた故郷の回想を可能にする、喪失のケアとしての価値。タムチンキ氏の事例に代表されるように、多くの人々にとって心の支えとなっている。
  3. 監視の牢獄(パノプティコン):個人のプライバシーや過去の汚点が、本人の意思に関わらず記録され続け、いつでも誰でも覗き見ることができる監視装置としての側面。「忘れられる権利」との対立は、今後も解決の難しい課題として残る。

5.2 「デジタル遺産」との向き合い方

我々は今、人類史上初めて「生活空間が過去にわたって詳細に記録され続ける」時代を生きている。かつて、風景は記憶の中にのみ残る曖昧なものであったが、今やそれはGPS座標と共に固定され、検索可能なデータとなった。

この不可逆的な変化に対し、我々個人ができる対策は限られているが、重要である。 まず、自身のプライバシーを守るためには、定期的に自宅周辺のストリートビューを確認し、問題があれば躊躇なくGoogleへ「ぼかし」をリクエストすることだ 。ただし、それは同時に、将来の家族や子孫が「かつての我が家」を見る機会を永遠に奪うことでもあり、そのトレードオフを理解する必要がある。   

また、社会全体としては、Google一社にこの巨大なアーカイブの管理を委ねてよいのか、という議論も必要だろう。公共性の高い「震災遺構」などは、公的なアーカイブとして国や自治体が主体となって保存・管理する仕組みも模索されるべきである。

ストリートビューの中の「死者」たちは、亡霊ではなく、かつてそこに生きた証である。画面の中の彼らは、沈黙したまま、しかし雄弁に「時間」の残酷さと尊さを我々に語りかけている。我々はこの新しい「記憶の地図」を手に、過去を慈しみつつも、過剰な過去に縛られることなく、未来へと歩を進めなければならない。

【管理者コメント】「地図」が「歴史」に変わる瞬間

本記事の制作にあたり、膨大なストリートビューの事例を調査する中で、私たちが直面したのは「利便性の陰に潜むエモーション」という現代特有の現象でした。

第1章で触れたように、この「タイムマシン機能」の起源が、東日本大震災後の「失われた故郷をもう一度見たい」という切実な願いにあったことは、技術の進化が必ずしも効率性だけを追求するものではないことを教えてくれます 。Googleストリートビューは、当初「場所を探す」ための空間的なツールでしたが、現在では「時を探す」ための時間的なアーカイブとしての性格を強めています。   

特に第2章で紹介した「亡き家族との再会」のエピソード群は、胸を打つものがありました。タムチンキ氏の事例に代表されるように、無機質なデータ収集車が偶然切り取った一瞬が、遺族にとってはかけがえのない「最期の日常」として機能する。これは、私たちが予期しなかったデジタル社会の新しい弔いの形と言えるかもしれません。

一方で、第4章で論じた「デジタルタトゥー」や「忘れられる権利」の問題は、この技術が持つ暴力性も浮き彫りにしています。「残したい記憶」と「消したい記憶」の選別は、誰が行うべきなのか。一度公開されたデータは、本当に制御可能なのか。これらの問いに、法整備も社会規範もまだ追いついていないのが現状です 。   

私たちは今、人類史上かつてないほど詳細に、自分たちの生活空間を記録され続ける時代を生きています。この記事が、単に面白おかしいスポットを探すだけでなく、私たちが日々残している「デジタルな足跡」の意味について、立ち止まって考えるきっかけになれば幸いです。地図はもはや、ただの道案内ではありません。それは、私たちの生と死、そして社会の変遷を刻み続ける、巨大な歴史書そのものなのです。

※本レポートの情報は、2026年1月時点の検索・閲覧可能な公開情報および判例に基づいています。travelvoice.jpグーグルマップ10年の歩み、進化には日本が寄与、これまでは「迷わない地図」、今後は「発見できる地図」へ【講演採録】 – トラベルボイス新しいウィンドウで開くnlab.itmedia.co.jpGoogleストリートビューにタイムマシン機能 東日本大震災がきっかけで開発、7年前まで町並みさかのぼれます | ねとらぼ新しいウィンドウで開くitmedia.co.jpGoogle、東日本大震災の被災地ストリートビューに「震災2年後」追加 「復興の過程も残したい」新しいウィンドウで開くblog.googleストリートビューで時間旅行 – Google Blog新しいウィンドウで開くinternet.watch.impress.co.jp「Google マップ」を四次元化、「ストリートビュー」で過去に行ける機能追加 – INTERNET Watch新しいウィンドウで開くwithnews.jp「グーグルアースに死んだ親父が…」一人の投稿から生まれた …新しいウィンドウで開くmaidonanews.jp7年前に亡くなった親父がストリートビューに!→「もしかして私 …新しいウィンドウで開くnlab.itmedia.co.jpギャアアア! Googleが公式ブログで“Googleマップに写ってしまった恐怖映像”の数々を紹介中新しいウィンドウで開くassist-all.co.jpGoogleアースで怖い場所ランキング徹底解説!世界と日本の心霊スポット座標や検索方法まとめ新しいウィンドウで開くapp-liv.jp絶対に検索してはいけない『Google Earth』世界の恐怖スポット集 – アプリブ新しいウィンドウで開くrush-up.co.jpストリートビューが怖い現象の正体と座標を最新検証!安心して楽しむための安全な探し方新しいウィンドウで開くblog.google震災遺構デジタルアーカイブプロジェクトを公開します – Google Blog新しいウィンドウで開くdentsu-ho.comデジタルアーカイブが紡ぐ、 一人一人の「震災の記憶」 ~グーグル馬場康次氏、秋山有子氏新しいウィンドウで開くglim-re.repo.nii.ac.jpデジタルアーカイブ・ベーシックス 2 災害記録を未来に活かす – 学習院大学学術成果リポジトリ新しいウィンドウで開くinternet.watch.impress.co.jp震災遺構のストリートビュー公開、津波の跡が残る学校や市庁舎などの内部 – INTERNET Watch新しいウィンドウで開くgoogle.orgなぜ災害をデジタルで記録するのか? – 東日本大震災と情報 – Google.org新しいウィンドウで開くhello-hiyoshi.comGoogleマップのストリートビューで過去の写真を見よう | ハロー!パソコン教室 日吉・中山とうきゅう ブログ新しいウィンドウで開くnote.com八ッ場ダムに沈んだ町に行っても仕方ない?それ、逆です。行か …新しいウィンドウで開くoyunowakusei.net巷で話題になった八ッ場ダム:水が貯まる直前の姿を見た | お湯のわく星新しいウィンドウで開くdev.classmethod.jp[小ネタ]Googleストリートビューで昔の写真を表示してみた …新しいウィンドウで開くrush-up.co.jpストリートビューの過去が見れなくなった時の原因と対策をPC・スマホで即解決! – Rush up新しいウィンドウで開くsupport.google.comストリートビューが過去の画像になった – Google マップ コミュニティ新しいウィンドウで開くitmedia.co.jp美しすぎる廃墟「軍艦島」をストリートビューで巡る 立入禁止区域も撮影 – ITmedia NEWS新しいウィンドウで開くinternet.watch.impress.co.jp軍艦島の「ストリートビュー」公開、住戸内部を含む立入禁止エリアも撮影 – INTERNET Watch新しいウィンドウで開くhatenanews.com「軍艦島」内部、Googleストリートビューで“すべて”公開 緑に囲まれた廃墟を眺める新しいウィンドウで開くmiraiz-inc.co.jpGoogleストリートビューに映っている自宅を削除(ぼかし)する方法 – miraiz株式会社新しいウィンドウで開くitbengo-pro.comストリートビューに写り込んだらどうする?削除依頼の仕方と法的な対処法 – ベンナビIT新しいウィンドウで開くnote.comストリートビューに映った個人情報を削除する方法【完全ガイド】|Google口コミ相談所(運営 – note新しいウィンドウで開くreddit.comGoogleマップが、最近2009年以前に撮影された日本の地域の画像を公開したんだって。見ての通り、画像はかなりボヤけてるけど、結構面白いよね。2009年より前のストリートビュー画像があるのは、日本のほんの一部だけだから、探してみて – Reddit新しいウィンドウで開くcorporate-legal.jpニュース「最高裁がグーグル検索結果削除を棄却、「忘れられる権利」とは」 – 企業法務ナビ新しいウィンドウで開くdaylight-law.jpネット上の逮捕歴の検索結果について削除を認めなかった最高裁判例新しいウィンドウで開くrecones-law.com【法律解説】ネット記事は削除できる?最高裁判例から見る削除請求の要件と可能性新しいウィンドウで開くinnoventier.com犯罪歴等プライバシー情報の検索結果の提供が違法となる基準を示したGoogle検索結果削除請求事件の最高裁決定について新しいウィンドウで開くmonolith.lawGoogle Mapのストリートビューとプライバシーの侵害 | モノリス法律事務所新しいウィンドウで開くcorporate-legal.jpニュース「ストリートビュー訴訟 控訴審も女性のプライバシー侵害認めず」 – 企業法務ナビ新しいウィンドウで開くsanno.ac.jpGoogleストリートビューの社会的影響と法的問題について新しいウィンドウで開くj-jurist.comデジタルタトゥーとは?消せない過去の自分に苦しめられる人生新しいウィンドウで開くrush-up.co.jpgoogleマップの過去の写真を徹底比較!保存・閲覧・活用法と見れ …新しいウィンドウで開く

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