ファイル番号: SCP-682-OMEGA “The Inevitability”

案件:SCP-682 “Hard-to-Destroy Reptile”(不死身の爬虫類)に関する最終脅威評価および包括的解析レポート

作成者: シニア研究員 ████・ヴァレンティン(サイト-19 収容スペシャリスト / オカルト現象解析班チーフ) クリアランスレベル: 4 (Top Secret) / 一部記述はO5評議会閲覧限定 日付: 2026年1月9日


序文:管理された敗北の記録

本レポートは、SCP財団が確保したアノマリーの中で、最も純粋な「憎悪」と「生存本能」を体現する存在、SCP-682に関する包括的な解析文書である。我々人類は、核分裂を制御し、宇宙へ飛び出し、現実改変すらもある程度の手順で封じ込めてきた。しかし、このたった一匹の爬虫類の前では、我々の科学も、魔術も、兵器も、すべてが児戯に等しい。

この文書は、単なる収容プロトコルの確認ではない。これは、我々がいかにしてこの怪物を殺すことに失敗し続けてきたかという、屈辱と敗北の年代記である。読者諸君、心して読み進めてほしい。我々はこの怪物を「収容」しているのではない。彼がその気になって世界を終わらせるその時まで、ただ「足止め」をしているに過ぎないのだから。


第1章:塩酸のプールに沈む悪夢 – SCP-682の基礎データ

1.1 溶解し続ける肉体、死なない細胞

サイト-██の最深部、重厚な防爆扉と幾重もの現実錨(Reality Anchor)に守られた先にあるのは、5m×5m×5mの巨大な水槽である。その内部は常に塩酸で満たされ、換気装置は酸の蒸気と、腐敗した肉の臭気を絶えず排出し続けている。その濁った酸の海の中に、SCP-682は沈んでいる。

外見は巨大な爬虫類、あるいは初期の地球に存在したかもしれない原始的な海棲獣を思わせる 。しかし、その正確な姿を特定することは困難だ。なぜなら、彼は常に「溶けている」からだ。高濃度の塩酸は彼の皮膚を焼き、筋肉を溶かし、骨を露わにする。しかし、SCP-682は死なない。破壊された端から、細胞レベルでの超高速再生が行われるからだ。この「破壊」と「再生」の無限のサイクルこそが、現在の収容プロトコルの核心である。彼を殺すことはできない。ならば、再生することに全エネルギーを費やさせ、脱走のための体力を削ぎ続けるしかないのだ 。   

1.2 物理法則を嘲笑う生理機能

SCP-682の生理機能は、熱力学の法則に対する冒涜である。彼は有機物、無機物を問わず、あらゆる物質を摂取し、エネルギーへと変換することができる 。驚くべきことに、鼻孔内部には特殊な「濾過エラ」が形成されており、満たされた塩酸そのものから電解質や微量物質を濾し取り、再生のエネルギー源としていることが判明している 。つまり、我々が彼を殺すために注ぎ込んでいる酸が、皮肉にも彼の生命維持装置の一部となっているのだ。   

さらに、彼の再生能力は単なる治癒ではない。身体の87%が破壊され、脳の大半が欠損した状態であっても、彼は活動し、思考し、言葉を発することができる 。これは、彼の意識あるいは「魂」とも呼ぶべき中核が、物理的な脳組織に依存していない可能性を示唆している。   

【表1.1:SCP-682 基礎ステータス概要】

項目データ / 評価備考
オブジェクトクラスKeter収容は極めて困難かつコスト過多。常に脱走のリスクがある。
推定全長可変(通常時は約3m〜10m)摂取した質量や脅威への適応形態により劇的に変動する。
推定体重可変(200kg〜50トン超)質量保存の法則を無視した増減が頻繁に観測される。
筋力測定不能(Class 5+)強化鋼板を紙のように引き裂く。適応により際限なく増大。
知能レベル高度な知性あり複雑な言語理解、哲学的思考、戦略的判断が可能。
攻撃性極大(Omnicidal)全生命体に対する根源的な嫌悪と抹殺衝動。
弱点なし(強いて言えば塩酸)あらゆる弱点は一度攻撃を受けると「耐性」へと変わる。

1.3 最初の言葉:「忌まわしい」

SCP-682は単なる野獣ではない。極めて高い知性を持ち、人間との会話が可能である。SCP-079(オールドAI)との接触実験において、彼らは複雑な情報のやり取りを行っていた 。   

財団が彼を捕獲した直後のインタビューで、なぜ農夫たちを殺害したのかを問われた際、彼は一言、こう言い放った。

「忌まわしい(Disgusting)」

これは、生存のための捕食でも、縄張り争いでもない。彼にとって、我々人類を含む生命活動そのものが、吐き気を催すほど「不潔」で「不自然」な誤りなのだ 。この言葉の重みこそが、彼との対話を不可能にし、彼を「殺戮者」たらしめている根源である。   

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