忘れられた旧道、森に埋もれた「トンネル跡地」
とある県の山中に、地図に載っていない一本の旧道がある。今は封鎖されており、正式なルートからも外されているが、地元の人間なら誰もがその存在を知っている。しかし、誰も名前を口に出そうとしない。
その旧道の終点にあるのが、通称“旧トンネル”と呼ばれる場所だ。正式名称すら忘れられたそのトンネルは、長さ60メートルほどの短い構造物で、コンクリートのアーチ状の入り口が深い木々に覆われている。昼間でも内部は暗く、照明設備もない。
驚くべきことに、トンネルそのものは崩落しておらず、老朽化が進んでいるとはいえ今でも歩行者であれば通り抜けることが可能だ。しかし──この場所に足を踏み入れる者は、ほとんどいない。
なぜならそこは、”振り返った者が帰ってこられなくなる”という噂が絶えない、異常なスポットとして知られているからである。
事故死者が出た“未解決事件”と、封鎖された理由
昭和50年代、この旧道とトンネルは小さな町を繋ぐ生活道路として使われていた。だが、ある年の春、地元の高校生3人がこのトンネルを通過中に行方不明となる事件が発生した。
残されたのは、1人の学生が手にしていた録音機器のみ。そこには仲間たちの笑い声、風の音、そして突如「後ろ、何かいる……」という呟きと、全員が叫び声をあげる直前までの音が記録されていた。
その事件以来、このトンネルは「事故が多い」「心霊スポットになった」として閉鎖され、行政も口を閉ざすようになったという。封鎖理由は「地盤の危険性」だとされているが、現地を訪れた者によると、それ以上に“誰かに封じられた雰囲気”があるという。
「絶対に振り向くな」──広まった異常な噂の始まり

地元のネット掲示板や怪談収集ブログに、このトンネルの話題が載り始めたのは2000年代後半。共通して語られていたのが、「トンネルを抜けるまで絶対に振り返ってはいけない」というルールだ。
・途中で後ろから足音が聞こえても無視しろ
・名前を呼ばれても振り向くな
・ライトが消えても前だけを見て歩け
このルールを破った者は、必ず何かを“連れて”帰ってくるか、もしくは帰ってこれなくなるという。
中には、友人グループで訪れた際、一人だけ「声が聞こえた」と言って振り向いた少年が、その直後に精神を病み、以後一言も喋らなくなったという話もある。
そして、こうした体験談の多くに共通するのが、“トンネル内の空気が異様に重くなる瞬間”の存在である。
検証された“振り返り映像”と、共通する異変
心霊系YouTuberたちの中には、この“旧トンネル”の検証を試みた者も多い。中でも有名なのは、ある投稿者がトンネル内で後ろを振り返る様子を動画に収めた映像だ。
その動画では、振り返った瞬間にカメラの映像が乱れ、音声が一瞬無音になる。直後に、投稿者が「今、誰かいた?」と震え声で呟く場面が記録されていた。
そしてその動画は、数日後に突然非公開となる。理由は語られていない。
さらに、その投稿者のTwitterはその後更新が止まり、本人も動画活動を引退。ファンの間では「呪われた」「精神を病んだ」と囁かれている。
検証映像に登場した複数の動画で共通していたのは:
- 映像に黒い影が映る
- カメラのピントがトンネル奥でぶれる
- 音声に“複数の足音”が混ざる
こうした共通点が存在することで、ただの噂話ではなく、“異常現象の報告例”として信憑性が増しているのだ。
怪異の正体は誰か?犠牲者リストと地元伝承
噂が全国的に広まったことで、地元の古老たちが語る“旧トンネルの由来”も発掘されていった。中でも有名なのが、以下のような伝承だ。
かつてそのトンネルの場所には「地元で祟り神とされる女性」が埋葬されており、道を通す工事でその封印が壊された。以後、不可解な事故が相次ぎ、最終的にトンネルは閉鎖されたという。
また、実際にこの地域では“行方不明者リスト”が作られており、1970年代以降に少なくとも6件の失踪が記録されている。この中には、トンネルを通ったとされる登山者や心霊スポット巡りをしていた若者が含まれている。
一部の地元民は、今でも「トンネルの前を通るときは手を合わせる」風習を守っており、“名前を呼ばないこと”“日没後に近づかないこと”を子供たちに教えているという。
トンネルと“異界”の境界説──失踪・幻覚・音声の謎
オカルト研究家の中には、このトンネルを“異界への通路”と考える者もいる。
その根拠として挙げられるのは:
- 通信機器が使用不能になるエリアが存在する
- 通行中に時間感覚が失われる
- 通過後に“数時間の記憶がない”と語る例がある
また、ある検証者は「出口に辿り着いたと思ったが、元いた場所に戻っていた」「同じ場所を何度も歩いている感覚だった」と語っており、トンネル内で“時空が歪む”現象が発生している可能性も考えられている。
さらに、“振り返った瞬間に違う世界に引き込まれる”という説もあり、その直後から発見されなくなったという事例は、ただの偶然とは思えない一致を含んでいる。
生還者たちの証言と、決して破ってはいけないルール
少数ながら、このトンネルを通過した後も無事だった“生還者”も存在する。彼らは共通して以下のように語る:
「絶対に前だけを見て歩いた」
「音がしても、声がしても、何が起きても立ち止まらなかった」
「出口が見えるまで、一度も目を逸らさなかった」
逆に、途中で“好奇心に負けた”者たちは、奇行を繰り返すようになったり、数日以内に連絡が取れなくなったりしている。
現在もネット上には、「絶対に振り返ってはいけないトンネル」「一度通ったら何かがついてくる」といったタグが存在し、このトンネルの存在を知らない者にまで噂が浸透し続けている。
誰が、何のために“振り返らせようとするのか”。
その正体を知る者は、今もいない。
投稿主のコメント
正直、こんな噂、最初は笑い飛ばしてました。でも、実際にその場所に立ってみると──空気が違うんです。森の匂いも、音も、光の差し込み方も全部、どこか現実味がなくて。最初の数歩は冗談半分でしたが、後ろから小石を踏むような音がして……それでも僕は、絶対に振り返らなかった。振り返っちゃいけないって、本気で思いました。トンネルを抜けた後もしばらく呼吸が浅くて、足が震えてました。帰宅してから、動画を見返そうとしたら、なぜか途中までしか録画されてなくて。別に何が映ってたとか、そういうのじゃないんです。ただ、あそこには“何か”がいる。そう思った。それだけです。
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